宝蔵神社

お地蔵様を祭祀する神仏習合の神社

概要

 京都府宇治市宇治塔の川32にある神社。山王神道(天台宗系の神仏習合)の聖地である「山王山」に鎮座し、現在にも神仏習合の伝統を継承している、数少ない神社である。
 宇治市観光協会と宇治商工会議所が主催する「全国有名盆踊り大会」(宇治夏の三大イベントの一つ)の会場の一つとしても知られ、この大会は元々宝蔵神社の「盂蘭盆供養大祭」の一環として行なわれていた。
 盂蘭盆供養大祭は8月17日から19日の三日間にかけて行われ、全国から毎年数十万人の崇敬者が集う。神仏習合の形式で行われる盂蘭盆は全国的にも珍しいものである。

沿革

 平安時代末期、「平等院鳳凰堂」で知られる世界遺産の朝日山平等院(当時天台宗寺院、現在は単立寺院)の鎮守社として建立された。この地には平等院の宝物庫である「宝蔵」が存在しており、それが名称の由来となる。
 山王神道(天台宗系の神仏習合)や修験道の聖地として崇敬され、やがて「山王山」と呼称されるようになった。
 本来は山王山全体が平等院の境内の一部であったが、明治維新後の神仏分離・廃仏毀釈の流れで平等院と分離され、衰退する。しかし、地元の人々の間での崇敬は続き、険しい坂道(上求参道)を登って訪れる人が後を絶たない霊場として知られていた。
 大正十年頃には山王山の麓に大阪の富豪・福田政之助が風雅の限りを尽くした山荘「福田山王荘」を建設し、大正十一年五月二日にはイギリスの皇太子がそこを訪れた。昭和二十九年、「生命の教育」提唱者である光明思想家の谷口雅春師が福田山王荘を買い取り、「生命の教育」を実践する場としての修練道場を建立する。
 そして、山崎平次宇治市長、寺川福三郎京都府会議員、辻利一宇治商工会議所会頭、田中定助宇治観光協会会長を始め、宇治市の全市会議員(肩書はいずれも当時)らを発起人にした宝蔵神社再興の奉賛会が結成され、昭和三十五年八月十八日に宝蔵神社が再興された。
 落慶大祭には述べ一万四千人が集い、脇田政一宇治市議会議長(当時)が祝辞で「宇治には平等院と並ぶ世界に誇るべき名所が出来た」と述べられた。また、大祭中に宝蔵神社再興を主導した光明思想家の谷口雅春師から「万教帰一」「罪はない」という内容の講演が行われた。
 昭和四十年には、堕胎で殺される赤ちゃんのいのちを守るため、谷口雅春師の意向により宝蔵神社境内に日本始めての無縁の流産児の供養塔である「全国流産児無縁霊供養塔」が建立され、以降、他の神社や仏閣でも無縁の流産児への水子供養が行われる嚆矢となった。
 著名な崇敬者としては、宇治茶の老舗である中村藤吉氏、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏、エステ業界の第一人者である河村京子氏らがいる。

祭神

・住吉大神
・大国主大神
・阿弥陀如来
・観世音菩薩
・地蔵大菩薩

 地蔵菩薩を明確に祭神とする全国で唯一の神社である。なお、本尊は曼荼羅であり、地蔵の像があるわけではない。
 毎年、盂蘭盆供養大祭とは別に地蔵盆も執り行われている。
 祭神は本尊曼荼羅の上記の神霊の外に、永代供養された全ての霊魂も祭神として祀られている。

境内

全国流産児無縁霊供養塔

 全国の無縁の流産児の霊魂が供養されている。戦後『優生保護法』に基づく政府の施策により堕胎が急増する中、「生命尊重」の立場より建立された。
 無縁霊である水子が供養された例としては、全国で初めてである。これを受けて、多くの寺院等でも宝蔵神社を見習い水子供養が盛んに行われるようになった。

自然災害物故者慰霊塔

 自然災害で亡くなった人々の霊魂を慰霊している。

入龍宮幽斎殿

 天照大御神・住吉大御神・塩椎大御神を祭神とする。宝蔵神社は神仏習合を旨とするが、ここは谷口雅春師の意向により、海外の信徒も含めて広く「万教帰一」の祈りの場とするため、神道の神を祭祀し仏教の用語である「龍宮」を用いつつも、神道でも仏教でもなく道観を模した形式にしている。
 実際に、海外のクリスチャンを始めとする様々な宗教の信者もここを訪れており、「神癒の社」と言われる。

山王権現社

 山王神道の主祭神である山王権現を祭祀する。

末一稲荷神社

 伏見稲荷大社より勧請されたお稲荷様が祭祀されている。

精霊招魂神社

 大東亜戦争で戦没された英霊が祭祀されている。

龍宮住吉分社

 長崎の龍宮住吉本宮の分社。

その他

★近年、京都光明地蔵院の「地蔵講演会」や「地蔵盆ミュージアム」による情報発信により、宇治市内にある「お地蔵様」や「お地蔵様の社」を意識する人や、参拝する人が増えているという。同時に、宝蔵神社神域にも「石仏」「龍王」「地蔵大菩薩」が祭祀されていることを知る人も増えてきているようである。

明光風美なる宇治において、千年を超えて貫かれる文化と祈りに、「六地蔵」「万福寺」「興聖寺」と並んで、「宝蔵神社」神域での「地蔵参拝ツアー」(宝蔵神社大拝殿)「仏教神道霊場巡り」(権現参道 龍王の滝見学)をしたいという市民の声が出ているという。

京都光明地蔵院 ~いのちを守る地蔵奉安堂~

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